高野山真言宗
清涼山不動院
522-0342
滋賀県犬上郡多賀町敏満寺178番地
高野山真言宗清涼山不動院
住職 佐々木琳慧(りんけい)
電話 0749-48-0335
FAX 0749-48-2679
お知らせ
また、28日には初ご命日がやってきます。
新年になっての初めてのご命日で、本尊のお不動様のお姿を拝める、最初の日となります。
古来より霊験あらたかな秘仏でありますので、皆様ぜひお参りください。
過去の「ともしび」は
不動院機関誌「ともしび」
とグーグル検索などの打ち込んでみてください。
すべてのページが読めます。
ともしび
第百六十一号
人間万時塞翁が馬
中国の「淮南子(えなんじ)」という書物に載っている話です。
中国北部に占いが達者な老人が住んでいました。モンゴル人の国との国境近くに住んでおり、国境は城壁で囲まれていました。ある時、老人の馬が牧場を脱走してモンゴル側に逃げて行ってしまいました。馬は貴重な財産ですし、モンゴルは敵国なので取り返しにいくわけにもいきません。近所の人がおくやみを言いにいくと、老人は平然として、
「いやいや、これが幸運の原因になるかもしれない。」
と言います。すると、逃げた馬がモンゴルからたくさんの足の速い馬を連れて戻ってきました。老人は一気に金持ちになり、近所の人がお祝いを言いに行くと、老人は、
「いやいや、これが不幸の原因になるかもしれない。」
と言います。ほどなく、老人の息子がモンゴル馬に乗っていたところ、落馬して足の骨を折ってしまいました。近所の人がおくやみを言いにいくと、老人はまた、
「いやいや、これが幸運の原因になるかもしれない。」
と言って平然としています。しばらくするとモンゴルとの間に戦争が起き、村の若者は徴兵されてほとんどが戦死してしまいましたが、老人の息子は足が悪かったので兵隊に取られず、生きのびることができました。
これが「人間万時(にんげんばんじ)塞翁(さいおう)が馬」の故事です。我々人間は目先のことしかわかりませんから、短期的な視点だけで一喜一憂しがちです。
非常に分かりやすいのが高校入試で、第一希望のところに合格するに越したことはありませんが、合格するのが本当に本人の人生にプラスなのかと言うと、個人差があって一概には言えません。かくいう私自身、地元の有名進学校を受験したら見事に撃沈し、まさか落ちるとは思っていなかったのでまともな滑り止めを用意しておらず、隣の岐阜県大垣市の私立校に片道五十五キロ、往復で百十キロかけて通学するという大変な高校生活を送りました。今でこそ笑って振り返れますが、当時は右も左も分からない十五の春の大挫折でしたから、本当に自分の人生は終わったと思ったものです。何しろ通学だけで朝二時間、帰りは米原駅での接続が悪くて、二時間半かかります。一日に四時間半も電車に乗っていますから、家に帰ったら食事と風呂を除いたら、自由になる時間など三十分くらいしかありません。これで勉強しろというほうが無理です。
ところが、ある日気がついたことがあります。自分はとんでもなく長い時間電車に乗っているが、この間だけ勉強して、家に帰ったら遊べばいいではないかと。当時はベビーブームで、通っていた私立校はありえないくらい人数が多く、ひとクラスが五十人、それが十二クラスもあって、一学年の人数が六百人、全校だと千八百人もいる、とんでもないマンモス校でしたが、私はその中でもダントツの遠距離通学者で、本当に千八百人中で一番遠いところから通っていました。
普通に考えたら頭がおかしくなるくらいのひどい環境です。私は高校を落ちた悔しさが骨身に染みており、多分進学校に合格した連中は、それで気を抜いて遊んでいるだろう、こっちはその間に勉強して、絶対三年後には逆転してやろうと、もう執念というか「怨念」(笑)のレベルで勉強しました。すると、面白いように成績が伸びました。だって、毎日四時間半も勉強するのですから。
三年後の入試では、楽々と国立大学に合格しました。母校の私立校は進学がさっぱりだったところで、現役で国立大に受かったのは、学校創設以来私が第一号でした。むろん六百人の同級生の中でも、国立大に入ったのは私一人です。
「人間万事塞翁が馬」の格言は入試にもよく出るので、高校時代の私も当然知っており、自分はとんでもなくひどい環境にいるが、これが幸運の種になるに違いないと思い、毎日努力しました。そして、本当にその通りになったのです。このことわざは本当のことを言っています。
もうひとつ、恵まれていたのは実家がお寺ということでした。苦しい時の神頼みとはよく言ったもので、毎日の大変さに心が折れかけたことは、それこそ何十回とあります。それが最後まで頑張れたのは、本当に信仰の力以外の何者でもありません。人生には信仰が必要です。神仏なしで生きていけるほど、人間は強くないのだと思います。もっとも、すべての不幸やトラブルが神仏の働きかというと、そういうわけではありません。ときどき、自分が何をするにしてもすべて神仏が背後に働いていて、その結果現象が起きていると考えている人がいますが、実際のところ、神や仏は一般人の生活に二十四時間かかわるほど暇(ひま)ではありません。お願い事をする人はたくさんいるので、とても忙しいのです。要所要所だけ助けていただけるのが実際のところで、基本的に自分の人生は自分で切り開いていく必要があります。ここを勘違いしてはいけません。
522-0342 滋賀県犬上郡多賀町敏満寺178番地
電話 0749-48-0335 FAX 0749-48-2679
高野山真言宗清涼山不動院
