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お知らせ

今月はいよいよ年に一回の大祭です。四国八十八カ所の「お砂踏み」を行います。10分足らずで四国八十八カ所の札所を回ったのと
同じだけのご利益がいただけるというおすすめの行事です。
法要は午前10時からと、午後8時からの2回行います。ぜひご参拝ください。

 

過去の「ともしび」は​

不動院機関誌「ともしび」

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​​ともしび  

               

第百四五十一号 三月二八日発行

めぐりあわせ

最近、赤尾好夫氏の著作「若人におくることば」を紹介しています。氏は旺文社の創設者でテレビ業界の発展にも尽力した人でした。私くらいの世代ですと、「赤尾のマメ単」という単語帳の著者として知られています。この本、往年の受験生のバイブルでした。

氏の書き残したものは、戦前から昭和40年くらいの時代のもので、今読んでもそのまま通用する内容のものと、時代を大きく反映しているものとの、二つに分けられます。これまではそのまま通用する内容のものを取り上げてきましたが、今月は時代を感じさせるものを紹介しましょう。

 

めぐりあわせ       

宇宙関係の科学者のつどいがあった。座談会の終わったあとで司会者が「いよいよ宇宙旅行ができるというすばらしい時代になったわけですが、先生がたはなにかご希望があったら率直に言っていただけませんか」とたずねたところが、あるひとりが即座にこう答えた。

「もう三十年あとに生まれたかったですね」と。一同文句なしに賛成したのである。もう三十年おそく生まれれば、月世界に別荘を作ることもできるであろうし、火星に新婚旅行をすることができるかもしれない、などと楽しい冗談がかわされたが、これらの科学者はだいたい五十歳前後であるから、もう三十歳若いとなると、二十歳、おおよそ諸君の年輩ということになる。これらの日本を代表するような科学者をもってしても、その願望は、諸君と同じ年代でありたいということである。私もまた同様である。しかもどのような科学的な力をもってしても、若返ることは現在ではとうてい及びもつかない夢想にすぎないことである。

無限の過去から永劫の未来に去る一瞬において、人類が宇宙に飛び出すという時代に諸君は良くもめぐり合わせたものである。これが人類に幸福をもたらすかどうかは知らない。だがこれが人類のたどる必然の道であることにまちがいない。そしてその人類の文化の前進のにない手は諸君である。考えると感激新たなるものがある。これを人類の繁栄のためにできるかどうかは諸君の手中にある。真剣に学んでもらいたいと思う。

昭三五年六月

 

この原稿が書かれたのが昭和35年6月で、西暦でいうと1960年。アポロ11号が月へ行ったのが1969年で、9年後のことですから、発言していた科学者のかなりの人はアームストロング船長が月に降り立つのを見届けることが出来たでしょうが、その後のスペースシャトルや人工衛星ミールなどは、とても目にすることはできなかったはずです。

科学者たちが「あと30年あとに生まれたかった。」というのは、当時の実感でしょう。高度経済成長の真っ只中ですから、科学の発達とともに明るい未来が来ると誰もが信じていました。手塚治虫の代表作といえば鉄腕アトムですが、アトムの妹はウランちゃん、兄もいてコバルトというのですが、アトムの意味は「原子」、ウランとコバルトは放射性物質ですから、現在の感覚で言うと物騒なことこの上ないです。しかし、当時は原子力というと夢のエネルギーと思われていて、マンガの主人公にまでなっていたのです。

この原稿が書かれてから30年どころか、倍の60年以上が経ってしまいました。結果から言うと、プラスとマイナスの差し引きはゼロです。情報技術などはとんでもなく発達しましたが、その代わり、能率優先が行き届きすぎて、ストレスでおかしくなる人がめちゃくちゃ増えました。この原稿が書かれた頃、「ニッポン無責任時代」という映画があり、植木等という人の演じるサラリーマンが主人公で、調子の良さだけでどんどん出世してしまう話で、

「サラリーマンは、気楽な稼業ときたもんだ」

という歌詞があり、サラリーマンは朝8時に出勤して、夕方5時までいれば給料がもらえる、気楽な稼業とされていたのですから、ストレスに悩む現代のサラリーマンからしたら、本当に夢のような話です。その代わり、テクノロジーは未発達で、CDもDVDもインターネットも、スマホもパソコンもありませんでした。私が大学生の頃まではコピー機も普及しておらず、手で全て書き写すのが常識でした。今思うとまるで「写経」をやっているようなものでした。

結局、時代を感じさせる内容だろうがなんだろうが、人間の本質はいつの時代も変わらず、道徳や宗教の果たす役割に変化はないのだと思います。  

 

522-0342  滋賀県犬上郡多賀町敏満寺178番地

電話  0749-48-0335  FAX  0749-48-2679 

高野山真言宗清涼山不動院

 

 

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